「生命線」確保のため町長が直談判 台風で孤立する集落

有料記事台風19号

田中基之 藤原伸雄
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 台風19号が上陸して16日で4日。道路や橋が寸断され、水や食料の確保もままならない孤立集落が、各地にある。

 福島県最南部、矢祭町の山間部にある高地原地区は、外とを結ぶ唯一の道路を失った。

 地区には0歳の乳児から高齢者まで11世帯約30人が住む。周囲は山に囲まれ、商店もない。地区を隔てる久慈川には全長80メートルの橋がかかっていたが、台風19号による増水で橋脚ごと流された。

 幸い電気は使えるが、橋には水道管が通っていたため、断水になった。厳しい環境で住民の生命線となっているのが、橋の上流約50メートルに架かるJR水郡線の鉄橋だ。

 水郡線は今回の水害で不通となり、住民が橋の代わりに使っている。ふだんは歩行者の立ち入りは厳禁だが、町長がJR東日本に直談判し、「やむを得ない」とJR側が折れた。

 独り暮らしの石井清一さん(68)は16日、鉄橋を渡り、徒歩で30分ほどの雑貨店でうどんや漬けものを買ってきた。前日には町のスーパーまで1時間半かけて歩き、1週間分の食料を買い込んだという。

 普段は自転車を使うが、徒歩と重い荷物は体にこたえる。断水の影響で風呂は我慢し、タオルで体を拭く日々だ。「何といっても買い物が困る。早く橋をつくってほしい」

 石井百合子さん(57)は同居する87歳の母親が通院できず、薬を病院からもらって、しのいでいる。「鉄橋を歩くのは怖いし、冬になると凍ってくる。高齢者がいるので心配です」と話す。

 16日、町長らと住民が今後について話し合った。町側は仮橋を作るまで約半年間、町営アパートへの引っ越しを提案したが、渋る住民が多かったという。(田中基之)

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■町中心部につながる唯一の道…

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