箱根登山鉄道、台風で陸橋が崩落「年内の復旧は困難」

村野英一
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 台風19号の豪雨に伴う土砂崩れで、箱根登山鉄道の宮ノ下―小涌谷駅間の陸橋の一部が押し流され、復旧に長期間を要するのが確実になった。国際観光地のシンボルといえる鉄道だけに、神奈川県箱根町は秋の紅葉の盛りを前に、交通網の課題に直面している。

 15日、記者が陸橋の崩落現場に入った。小涌谷駅から南東へ約250メートル。崩落が判明した13日以降も雨が時折降って地盤が緩み、15日午後1時時点で復旧作業は始まっていない。

 急斜面のくぼ地にかかる長さ約50メートルの陸橋のうち、小涌谷寄りの橋脚が土砂で谷底へ押し流されていた。渓谷の随所に木や草が繁茂しているが、橋脚が消えた上下の部分は茶色の土が露出している。

 宮ノ下寄りの橋脚は残っているが、長さ数十メートルの線路と枕木が組み合わさったまま陸橋からはずれ、ねじ曲がりながら斜面上にぶら下がっている状態だ。

 押し流された橋脚の一部は、ゴーゴーと音をたてて流れる川につかっている。全体が緑色の鉄骨で、ねじの付近がぐにゃりと変形していた。

 現場から歩道経由で小涌谷駅へ戻る手前に、箱根駅伝のルートにもなっている小涌谷踏切がある。踏切や周辺の線路は土砂に広く覆われ、流れてきた木や石も散乱していた。崩落現場方向を見ると、1頭のシカが線路を横切った。

 踏切に近い国道1号沿いに住む商店主の岩田光夫さん(83)は「国道は12日の昼から夜、全体が茶色の濁流になり、踏切へ流れ下った。初めてのことだ。水と一緒に石も流れ、店の前の柱にガチンガチンとぶつかる音がした」と話した。

 宮ノ下駅から大平台駅方向へ下った先のトンネルの前にも大量の石が堆積(たいせき)し、線路を覆っていた。

 箱根登山鉄道関係者によると、陸橋再建と、陸橋上部の今回崩落したのり面の補強工事に長期間を要する見込みで、箱根湯本―強羅の鉄道全線が「年内に復旧するのは困難」という。

 一方、強羅駅から大涌谷へ向かう経路にある箱根登山ケーブルカーも不通だが、復旧作業は進んでおり、今後数日間で運転を再開する見通しという。

 箱根山の噴火警戒に伴う大涌谷への立ち入り規制の解除を決める火山防災協議会が16日に県庁で予定されていたが、台風の被害への対応のため延期された。ただ、大涌谷では台風による大きな被害はないとされ、近日中の規制解除が見込まれる。箱根登山鉄道は小田原から大涌谷への観光ルートを確保するため、箱根湯本―強羅駅間の代行バスの運行を検討するという。(村野英一)

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