2階足元に水、家族は手を合わせた 千曲川、決壊その時

有料記事台風19号

里見稔
【動画】台風19号で決壊した千曲川の堤防で復旧工事=ドローンで長島一浩、内田光撮影
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 台風19号による豪雨で決壊した川の堤防の目前で、濁流の中、救助を待ち続けた住民がいた。

 木造2階建ての家の1階は壁がはがれ、柱に樹木が絡みついていた。長野市内を流れる千曲(ちくま)川の堤防決壊現場から北に約150メートル。ヘリコプターでの救出後、初めて自宅に戻った下川清和(きよかず)さん(71)=同市津野=は15日朝、室内を覆う土砂やがれきに「悲惨だ。家族には見せられない」とうなだれた。

 台風が伊豆半島に上陸した12日夜、下川さんは2階の寝室で、妻の智恵(ともえ)さん(71)と寝付けずにいた。13日午前2時半すぎ、防災無線が大音量で響いた。「堤防が決壊する恐れがあります」。布団を出て窓から外を見ると、庭にうっすら水が張っているのが見えた。

 千曲川のそばで生まれ育ち、水があふれるのは何度か見たことがある。地元の自治会から避難を呼びかけられてはいたが、12日夜の雨脚はそれほどでもなく、堤防上の道路を歩く人もいた。「2階にいれば大丈夫」。奥の部屋で寝る母の一子さん(93)を起こしつつ、冷静でいたはずだった。

 まもなく、「カン、カン、カン」という鐘の音に、ぎょっとした。火事の時にしか鳴らさないはずだ。実はこの頃、堤防が崩れ始めていた。

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 水の流れる音がはっきり聞こ…

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