失敗学の提唱者が語る自らの失敗「日本に後悔する時が」

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聞き手・大牟田透
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 東京電力福島第一原発事故で強制起訴された旧経営陣3人に、東京地裁は先月、無罪を言い渡した。事故がなぜ起き、防げなかったのかは、今も十分に解明されたとは言えない。7年前、自ら提唱する「失敗学」の手法で原因究明を目指した畑村洋太郎東京大学名誉教授は「いまも悔いが残る」と語る。「失敗」の訳を聞いた。

なお漂う「特有の『気』」

 ――政府の事故調査・検証委員会の委員長を務めた立場から、今回の判決をどうみましたか。

 「あの事故を責任問題または刑法の方向からだけ見て、それでよしとする社会は、『幼稚』という感じがします。事故から何を学ぶか。再発防止も大事ですが、それ以前に現象がどう進んでいったか、被害がひどくならないように収める方法はなかったか、そういうことを事故が起こる前に考えておかなければいけなかった。後から司法に丸投げしてもダメです」

 ――関係者に率直に打ち明けてもらうことで、再発防止の鍵を探る。そんな「失敗学」の手法を畑村事故調はとりました。報告書をまとめてから7年経ちましたが、振り返って何点ですか。

 「責任追及のための普通の事故調ではなく、再現実験などで事故を実証するところまでするという条件で委員長を引き受けました。委員会の名称に『検証』の2文字も入れましたが、再現実験ができず、結果として検証をあきらめざるを得なかった。60点と思いたいところだが、30点ですかね」

 ――そこまで悔やむ理由はどこにあるのですか。

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 「失敗学的な考えを委員全員…

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