クローン牛、静かな最期 「畜産に貢献しない」と言われ

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波多野陽
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 世界初の体細胞クローン牛として生まれた「かが」が死んだ。一般的な牛の寿命にあたる21歳3カ月、老衰だった。双子の「のと」も昨年5月に死亡した。生命科学がめまぐるしい展開を見せる現代。雌の双子は「人に与えられた生」を静かに終えた。

 9日正午ちょうど。石川県宝達志水町の県農林総合研究センター畜産試験場の入り口そばにある牛舎で、かがは職員に見守られ、息を引き取った。脳など主要な臓器は取り出され、遺体は10日に焼却された。

 見学者の人気もあり、職員の思い入れも深かった。向野逸郎副場長は「牛は殺処分されることが多いので最期に立ち会うことは少ない。受精卵の培養など、畜産技術の向上に貢献してくれた」と振り返った。

 双子は1998年7月5日朝、生まれた。早産だったため、「世界初のクローン牛」となり、注目を浴びた。成長した哺乳類の細胞からのクローンは、英国のクローン羊「ドリー」に続いて2例目。「クローン人間」の可能性も取りざたされるなど、生命倫理をめぐる議論を呼んだ。

 クローンに父はいない。双子の「代理母」は出産翌日に死んだ。早産に加え、その後各地で生まれたクローン牛は短命だったこともあり、2頭も心配されたが、すくすく育った。

 やがて全国にクローン牛が広がった。だが、食用にすることに消費者の抵抗感は強く、国は市場に出すことを断念。石川県も「畜産業に貢献できない」として2006年度でクローン牛研究を打ち切った。

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