「育てたい」孤独の母は泣いた キクとハシは問いかける

有料記事

宇津宮尚子
[PR]

 「赤ちゃんポストに子どもを預けたいが、場所が分からない」。6年ほど前、慈恵病院(熊本市)の看護部長だった田尻由貴子さん(69)は電話を受けた。30代の母親が自ら車を運転して着いたとき、赤ちゃんは胎盤がついたまま。誰にも妊娠を言えず、風呂場で一人、出産したという。

 「あなたはどうしたいの」。田尻さんが尋ねると、母親は「育てたい」と泣いた。家族を交えた話し合いの結果、特別養子縁組で赤ちゃんの養親を探すことになった。

 慈恵病院が2007年に開設した「こうのとりのゆりかご」は、育てられない事情のある赤ちゃんを、匿名で預けることができる、国内唯一の施設だ。JR熊本駅から車で約10分、れんが調の洋風建築が目を引く病棟の裏の、垣根や植栽に囲まれて通りから見えない一角にある。近くにマリア像がたたずむ扉を開けると、中に親に宛てた手紙があり、さらにその奥に、赤ちゃんを寝かせるベッド。すぐ隣には相談室がある。

 18年度までに預かった赤ち…

この記事は有料記事です。残り2745文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら