心を病んで学校や職場に行けなくなった精神障害者の社会復帰を、フットサルを通じて支援する取り組みがある。チームで活動するうちに自信を取り戻し、復学や就労につながるという。彼らと共に汗を流し、回復する様子を見守ってきた精神科医の岡村武彦さんは「日本人はもっと遊びを大切にしよう」と提案する。なぜか。
――心の病と共にスポーツをする姿がなかなか想像できません。
「以前、ある講演会で報告したときも、『残酷なことをさせている。基礎練習を繰り返させるなどつらいことをなぜさせるんだ』と批判されました」
――フットサルのルールやプレーに健常者と違いはありますか。
「ありません。国際サッカー連盟のルールにのっとっています。ファウルもきっちりとり、何かを緩くすることはありません」
――病気の人に無理は禁物ではないでしょうか。
「私も2000年ごろまでは、激しい運動はできないと思っていました。『苦しい思いをしているのだから、しんどいことはやめるべきだ』とか、『けがをした時にどんな反応や影響が出るのか分からない』という意見もありました。今思えば、それは偏見だったと感じます。当時の医療は患者さんにある意味、過保護でした。やれる人のチャンスの芽をつんでいたと思います」
――どうしてそう思うようになったのですか。
「私の患者さんに15歳で統合失調症を発症し、人の考えていることが聞こえると訴える男性がいました。薬で症状は治まったものの、自信を失って高校を中退。3~4年間引きこもり、入院もしました。デイケアを勧めたのですが、『面白くない』というのでフットサルに誘いました。すると、何度も練習にきました。1年間、誰ともしゃべりませんでしたが、女性には優しく足元に、走れる人間には前にパスを出せる選手でした。チームの主将にもなって自信をつけ、大学にも進みました。フットサルが回復の支えになったのです」
――運動や競技スポーツが精神障害に良いという医学的な根拠はあるのでしょうか。
「ジョギングや筋トレ、ヨガ…
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