外交関係失う台湾 トランプ政権の自国第一主義も影響?

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植松佳香
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 台湾と外交関係を結んでいた、太平洋の島国のソロモン諸島とキリバスが相次いで中国を承認し、台湾と断交しました。これで、台湾と外交関係をもつのは15カ国だけになり、半分以上が中南米に集中しています。なぜ、遠い中南米ばかりと外交関係が続くのか。断交がさらに続けば、どういう影響があるのでしょうか。中国と台湾の関係に詳しい、法政大学の福田円教授に聞きました。

 ――そもそも、台湾と中国の関係はどういうものでしょうか。

 中国大陸では20世紀初頭に清王朝が倒され、「中華民国」が成立しました。しかし、第2次世界大戦後の1949年、中国共産党との内戦の末に中国大陸では「中華人民共和国」が成立、中華民国政府は台湾に撤退しました。その後長らく、双方の政府が正統な「中国」であることを主張してきました。現在日本では「中華人民共和国」を「中国」、「中華民国」を「台湾」と呼ぶことが定着しています。

 中国と台湾の関係は南北朝鮮やかつての東西ドイツと同じような、「分断国家」だと言えます。ただ、双方は互いを国家として認めていません。中国政府は台湾を「中国の一地域」と扱っており、台湾でも憲法上は大陸を含む中国全土を統治しているということになっています。そのため、「二重承認」は認められず、各国はどちらかを承認したら、もう片方との断交を迫られる状態が続いてきました。

 ――各国との関係はどうなっているのでしょうか。

 この点は、時代によって変わっています。1960年代までは台湾と外交関係を結んでいる国の方が多く、69年には70カ国と外交関係がありました。この頃までは、国連安全保障理事会常任理事国としての代表権をもっていたのも台湾でした。しかし、71年に国連総会の決議によって代表権が台湾から中国に移り、台湾は国連機関から脱退。翌72年にはアメリカのニクソン大統領が訪中して中国との和解に踏み切りました。これを機に、中国と外交関係を樹立する国が相次ぎ、台湾と外交関係を維持する国は78年には22カ国まで減少しました。日本も72年に中国を承認し、台湾と断交しました。

 台湾と外交関係をもつ国はその後、1990年代に30カ国まで増えたこともありますが、現在は再び減っています。2016年に蔡英文政権が誕生した時点では22カ国でしたが、現在は15カ国となり、過去最も少ない状況です。

遠い国ばかりと

 ――15カ国のうち、9カ国が中南米の国々。残りもアフリカのエスワティニ、バチカン、太平洋の島国のナウルやツバルなど、台湾とは縁遠そうな国ばかりです。

 日本ではなじみが薄い、小さな国が多いですよね。実は台湾の人々も同じで、これらの国が「どこにあるかわからない」という人もいます。中南米や太平洋地域に共通するのは、「アメリカにとって戦略的に重要で、中国の影響が及びにくかった」という点です。冷戦期の台湾は西側陣営の一員という位置づけで、79年にアメリカとの外交関係がなくなった後も、良好な間柄を維持していました。

 他方で、米国と中国は外交関係樹立後もイデオロギーの違いを抱え、一定の緊張関係にありました。そのため、アメリカの影響力が強い地域には、台湾との外交関係を保持している国が多いという見方ができるでしょう。

 また、今年9月に中国を承認し、台湾と断交したソロモン諸島とキリバスは、いずれも太平洋地域の島国です。この地域も米国の戦略的要所ですが、近年は中国の影響力拡大が指摘されています。中国の外交攻勢は「一つの中国」の立場に立たない台湾政権への圧力とも取れますが、もっと広い視点で見ると、アメリカに遠慮しなくなったサインと見ることもできます。

 ――新たに中国と外交関係を結ぶ国は、なぜそういう決断をしたのでしょうか。

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