注文選べず泣いた10代名人 師が相手でも潰しにいった

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芝野虎丸新名人、誕生直後に【第44期囲碁名人戦・第5局】=井上未雪撮影
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 囲碁で史上初の10代名人が誕生した。

 静岡県熱海市の「あたみ石亭」で打たれていた第44期名人戦七番勝負の第5局は8日、挑戦者の芝野虎丸八段(19)が張栩(ちょうう)名人(39)を破り、タイトルを奪取した。七大タイトル戦初挑戦となる今期名人戦、開幕初戦こそ落としたものの、第2局から一気の4連勝でシリーズを制した。

 19歳11カ月での名人獲得は、20歳4カ月で名人になった10年前の井山裕太・現四冠(30)の記録を破り、囲碁七大タイトル戦史上最年少となる。規定により、八段から九段に昇段。2014年9月のプロ入り(初段)から5年1カ月の九段昇段は、過去最速だった井山の7年6カ月を大幅に上回るスピード昇段。最速、最年少と記録ずくめの名人獲得となった。

 神奈川県相模原市出身。名は「虎丸」と雄々しいが、身長165センチ、体重45キロの痩身(そうしん)。その所作は、端正で優雅だ。

 2日がかりの名人戦の対局中、正座を崩さず、ケーキやフルーツをつまむときは、そのまま碁盤から右45度に体の向きを変え、皿を持ち上げ口をすぼませる。そっと皿を盆に戻し、盤に向き直ると音もなく石をつまみ、盤に置く。

 だが、盤上の石から発するオーラは熱い。相手の意図に反発し、ここぞのときは想定を超える踏み込みを見せ、蹂躙(じゅうりん)する。所作と着手の温度差が異彩を放つ。

「虎丸に主観的な質問はしない--」。師範たちは申し合わせ、大器の成長を見守りました。入門、プロ入り、そしてタイトル奪取へ。一気に駆け上がった新名人の軌跡を追いました。

 他に見られないユニークな棋士像の源流は、繊細で泣き虫だった少年時代にさかのぼる。

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