鶏とトマトとキノコのスープ 素材のパズルで増すうま味

ごはんラボ

編集委員・長沢美津子
[PR]

ごはんラボ 鶏とトマトとキノコのスープ

 今週から4回のテーマは「だしとスープ」です。目指すのは使い道に合わせ、手軽な方法でだしやスープを作ること。体を温めてくれる汁物や、ジュワッとだしがあふれる煮物など、家で食べたい料理のレシピを工夫しました。

 まずは「鶏とトマトとキノコのスープ」から。手順は簡単なのにホッと体に染みる深い味わいは、グルタミン酸、イノシン酸といった「うま味」を出す素材を選んで組み合わせているからです。

 鶏手羽元は肉も皮のゼラチン質も生かせるスープ向きの部位。酒と煮立てると臭みが飛び、すっきりしたコクが出る。一段上のおいしさになります。ここにトマトとマイタケを加え、うま味も香りもアップさせる作戦です。料理監修の有馬邦明シェフは「鍋の中でスープを育てていく感覚です」。

 アレンジでは、完成したスープにしょうゆをたらり。好みの薬味を添えて、だし茶漬けにしました。「洋」から「和」への大変身です。(編集委員・長沢美津子

監修・料理:有馬 邦明

写真・図版
ここから続き

調理科学 :川崎 寛也

【材料(3人前)】

□ 鶏手羽元 6本

□ ミニトマト 6個

□ マイタケ 1パック(100g)

□ ニンニク 薄切り2枚

□ 日本酒 150ml

□ 水 800ml

□ 塩 小さじ1

【道具】

□ まな板と包丁

□ 鍋とおたま

【作り方】

①ミニトマトはへたを取って半分に切る。ニンニクは薄切りにする。マイタケは一口大に手で裂いておく。

②鍋に日本酒と鶏手羽元を入れて中火にかける。日本酒をしっかり沸騰させるのがコツ。アルコールが蒸発する時に、肉の臭みも一緒に飛ばしてくれる。

③ニンニクと水を加える。沸騰したら浮いてきたあくを取る。火を弱めて表面が静かに波打ち、鍋の2~3カ所が沸いている状態を保って20分ほど煮込む。スープが濁るのでふたはしない。途中であくが出たら取る。味をみて、鶏のうま味や香りを感じればOK。

④塩、ミニトマト、マイタケを加える。火を少し強め、トマトとマイタケの味がスープになじむ程度に5~6分加熱する。軽く混ぜてスープの味をみると、うま味も香りもぐっと増している。塩が足りなければ好みで調整する。

【アレンジ】

【動画】鶏とトマトとキノコのスープ=合田昌弘撮影

◆鶏だし茶漬け

 洋風に作ったスープが調味料と薬味のアレンジで和風に。具は別に食べて汁だけをご飯にかけてスープ茶漬けに。「鶏とトマトとキノコのスープ」が出来上がったところに、しょうゆ小さじ1を加える。薬味は白菜の漬物とミョウガをそれぞれ刻んだもの。茶わんにご飯を盛ってスープをかけ、薬味をのせる。薬味はワサビや梅干しなども。スープが足りなければお茶で割るといい。

Cookery Science

 食品が含むうま味成分は主に3種類。昆布、トマトなどの野菜、発酵食品に多いのは「グルタミン酸」で、肉や魚は「イノシン酸」だ。「グアニル酸」はキノコ類が代表で乾燥や加熱により成分が増える。各地の伝統的な汁物の料理は、うま味成分の多い材料を効果的に使っている。

だしの素材 組み合わせは無限

 今回のシリーズの調理科学監修は川崎寛也さん。味の素株式会社の食品研究所で一流店のシェフらと協力し、おいしさと調理法の研究をしています。料理の「だし」を「素材に含まれるうま味の成分と香りの成分を液体に溶かし出し、汁にしたもの」と定義します。

 日本の昆布やカツオ節は、うま味と香りの成分が濃縮され、短時間でだしが取れる優れた食品です。ただ、視野を広げれば、身近にだしを取るのに適した素材はいろいろあると言います。「組み合わせは無限で、どんな味わいにしたいのか、デザインする発想で楽しむことができます」と川崎さん。最新の知見から、日常へのヒントを探ります。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら