南海トラフ地震臨時情報が発表されたら… どう備える?

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編集委員・瀬川茂子
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 三重県沖でマグニチュード(M)7.5の地震が発生し、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を気象庁が発表しました――。

 ある日、こんなニュースが流れてきたら、どう受け止めたらいいのだろう。「注意といわれても……」と戸惑いそうだ。科学的にはどう考えられているのか。

 9月15日、京都大学で日本地震学会の特別シンポジウムが開かれた。「南海トラフ地震臨時情報」に地震学を生かすための方法が議論される中、「枠組みができると、それに合わせて対策を考えてしまう。それでいいのか」といった疑問が投げかけられた。真意は後で尋ねるとして、まず臨時情報についてざっとおさらいしよう。

 静岡県沖から九州沖にかけての南海トラフでは巨大地震を繰り返してきた。最大M9級の地震で、約23万人の死者が出るという被害想定もある。実用的な地震予知はできないが、地震や異常現象が観測され、大地震発生の確率が高まった場合、防災に役立てようと、気象庁が臨時情報を発表する。主に三つのケース(図)が想定される。

3ケースを想定 発生予測は困難

 一つはM8以上の地震が発生するケース。南海トラフでは、震源域の東側でM8級の大地震が起こり、約30時間後や2年後に西側で大地震が続いた例がある。世界的にみると、M8以上の地震発生後に隣接領域で7日以内にM8以上の地震が発生した事例は、103例のうち7例。内閣府の有識者会議は、M8級地震直後の確率は通常より約100倍高まるとした。

 次にM7以上の地震発生ケース。東日本大震災では2日前に宮城県沖でM7級の地震が発生した。世界の事例から、発生確率は数倍高まるとした。

 そして三つ目は、プレート境界が低速でずれ動く「ゆっくりすべり」のケースだ。巨大地震は、プレート境界ががっちりくっついた「固着域」が高速でずれ動く現象だ。この固着域で前兆現象のゆっくりすべりが起こるという説があり、2年前まで東海地震予知体制の根拠となっていた。しかし、シミュレーションでは、ゆっくりすべりの後、すべりが加速して地震に至る場合やそのまま終わる場合がある。

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 臨時情報発表後は、「どうな…

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