日韓の大学生が議論して見えた関係打開のヒント

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太田成美
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 元徴用工問題に端を発した日韓関係の悪化はとどまるところを知らない。政治部記者として取材してきた首相官邸や外務省の関係者からは、関係改善に向けた前向きな言葉は聞こえてこず、閉塞(へいそく)感すら感じる。そんななか、日韓の大学生が「民間交流」に取り組んでいると聞いた。何かヒントはないものか。会いにいってみた。

 9月28日、東京・日比谷公園韓国料理のトッポギやチヂミの屋台から食欲をそそる香りが漂っていた。ステージはK-POPのライブで盛り上がり、「韓服」の試着など文化を体験するブースも並ぶ。民間が主催し、日韓両政府が後援する「日韓交流おまつり」。29日までの2日間開かれた。日韓国交正常化40周年を記念して2005年に韓国で始まり、09年からは日本でも開かれている、日韓最大の文化交流事業だ。

 その一角にあるテントには「日韓交流ブース」が設けられていた。日韓の大学生と来場者が輪になって、真剣な表情で話し込んでいた。

 来場者は10代から60代以上までと幅広い。中年女性が韓国からの訪日観光客が減っていることについて質問すると、韓国の大学生はこう答えた。

 「韓国では国民と政府を分けて考える。行かない人は、国民じゃなく、日本政府が嫌いだから行かない」

 反対に、韓国の大学生からも質問が飛ぶ。

 「日韓関係が悪くなっても韓国ドラマを放送しますか」。来場者が「全然関係ないよ」と好きなドラマを答えると、韓国の大学生からは笑顔がこぼれた。

 「日韓交流ブース」では約30分間、こういった対話をする。今回初めて設けられた。

 企画したのは、政府の国際交流事業「JENESYS(ジェネシス)」で訪韓した経験のある全国の大学生らだ。ここに、同じ「JENESYS」で招かれ韓国から来日中の大学生が加わった。今年度は220人の大学生らが日韓を往来する予定だ。

 「JENESYS」では日本政府がアジア太平洋の若者を日本に招いたり、日本の若者を派遣したりする。近隣国の対日理解の促進や親日派・知日派の発掘、対外発信強化を充実させることが目的の事業だ。

 ブースを企画した一人、和歌山大学3年の姜愛美さん(22)は、「どちらが良い悪いという議論をせずに、韓国の人がどう思っているかを知る機会にしたい」。歴史認識の問題についても、「日本の授業では旧石器時代にあんなに時間を使うのに、近現代史はすぐに終わってしまう。解決は難しくても、お互いを知って理解することは必要」と話す。

 姜さんは在日韓国人3世。関係悪化で在日韓国人に差別の目が向かないかも気がかりだという。

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 姜さんが、日韓交流に取り組…

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