ほくほく感と歯ごたえ ユダヤ系が伝えるイタリアンの味

有料記事地球を食べる

沢村亙
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 まるで巨大な肺のように、毎夜、大勢の観劇客を吸い込んでは、はき出すニューヨークの劇場街ブロードウェー。通りを隔てた西側(マンハッタンを東西に走る「46丁目通り」のうち、南北を走る「8番街」と「9番街」の間)に、1973年、当時のジョン・リンゼー・ニューヨーク市長が〈パリをのぞいて、こんなグルメ街は世界中を探しても見つからない〉と意気込んで、「レストラン横丁(Restaurant Row)」と名付けた一角がある。

 その後、石油ショック後の景気後退などもあり、横丁を含む一帯はさびれた。私がかつてニューヨーク特派員だった1990年代の半ば、あたりはポルノショップが立ち並び、麻薬の売人や売春婦が角々にたむろし、上司からも「危ないから8番街から西側に行かないように」と注意されていたほどだった。

 いま、往年の活気が復活した。まばゆい照明、まっすぐに歩けないほどの雑踏。無数のレストランが軒を連ねるブロードウェーの周辺で、むしろ「横丁」は埋没した感すらある。

 入れ替わりが激しい飲食業界で、レストラン横丁の盛衰をずっと見守ってきたのが「ラタンツィ(Lattanzi)」(361 West 46th Street)である。入り口の看板には「正真正銘のイタリアン」とはあるものの、失礼ながら、なんの変哲もないイタリア料理店にみえる。

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 ところが、この店で午後8時…

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