開発も実用も日本人研究者が貢献 リチウムイオン電池

有料記事

写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
[PR]

 だれもが気軽に持ち歩くスマートフォンやパソコンには、リチウムイオン電池が入っている。高性能で小型の電池がなければ、「モバイル時代」は来なかった。その実用化に貢献したのが、2019年のノーベル化学賞受賞が決まった旭化成名誉フェローの吉野彰(あきら)さん(71)をはじめとする、多くの日本企業の研究者たちだった。

 「小さくて軽く、何度も繰り返して使える安全な電池を作りたい」。1980年代、多くの研究者が新しい充電式電池(二次電池)開発に取り組んでいた。

 電池はプラス(正)とマイナス(負)の二つの電極を組み合わせてできあがる。小型にするには高い電圧が出る電極を使う必要がある。電気を出す化学反応をしやすいリチウムを電極にすれば、従来型のニッケルカドミウム(ニカド)電池などを上回れることはわかっていた。ただ、リチウムが金属のまま使うと、発火する恐れがあった。

 70年代後半、英オックスフォード大にいたジョン・グッドイナフ教授(97)らは、酸化化合物のコバルト酸リチウムが二次電池の正極に使えることを発見。このコバルト酸リチウムを正極に、炭素材料を負極に使う方式を開発し、基本特許を取得したのが吉野さんだ。

 吉野さんが当時まず注目したのは、電気を通す「ポリアセチレン」というプラスチック材料。当時、筑波大にいた白川英樹さん(83)が開発し、2000年にノーベル化学賞を受賞した素材だ。

 電子を簡単に出し入れでき、放電と充電を繰り返せる。「電極に使えないか」。実験すると負極に使えることはわかったが、研究はそこで暗礁に乗り上げた。正極にする材料が見つからなかった。

 82年の年の瀬、研究室の大掃除を終えてひと息ついたときだった。取り寄せたきり、机に積み置いてあった資料が目に入った。グッドイナフさんらよる論文で「コバルト酸リチウム」という物質が正極になるとの内容だった。

 これだと電池内部にあるリチウムは金属ではなく「イオン」の状態なので、安全性は格段に高まる。「これと組み合わせれば」。年明け早々に電池を試作すると、充電も放電もスムーズだった。

 ただポリアセチレンがかさばるため、小型化できないのが課題だった。分子の構造が似ていて体積が少ない炭素なら、解決できるはず――。そう考えて使えそうな素材を探した。

ここから続き

 素材メーカーの旭化成にいた…

この記事は有料記事です。残り2763文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら