台風で食品廃棄、増税追い打ち 家族経営のスーパー閉店

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鶴信吾
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 千葉・房総半島の漁港町で約80年間、地域を支えてきた家族経営のスーパーマーケットが30日、最後の営業日を迎えた。台風15号で店舗兼住宅が壊れ、停電に見舞われたうえ、10月1日には消費増税が迫る。「苦渋の決断」。店を支えてきた一家や従業員は寂しさを抱えつつ、常連のお年寄りらに感謝の思いを伝えた。

 台風15号で甚大な被害を受けた千葉県鋸南(きょなん)町。漁港近くにあるスーパー「明石丸」は30日夜、約80年の営みに終止符を打つ。

 港で揚がった新鮮な魚や、手作りの総菜から日用品まで何でもそろう「よろず屋」だった。この日朝、閉店を惜しむ地元のお年寄りが相次いで訪れた。

 「寂しくなるねえ」。声をかけられるたび、店を切り盛りしてきた黒川美奈さん(56)は「ありがとうございました」と応じた。

 ほとんどの商品が棚から消え、がらんとした店内。黒川さんは、動かなくなった冷蔵庫を手でさすり、「お世話になりました」とつぶやいた。

 消費増税を目前に控えた今月9日、台風が直撃した。店舗兼住宅の屋根や窓ガラスが壊れ、停電が5日間ほど続いた。生鮮食品はすべて廃棄。雨漏りで店の冷蔵庫3台が壊れ、修理には1台100万円以上かかることが分かった。

 黒川さんの祖父母が始めたこの店。継いだ両親も80代になり、父はいま、入院中だ。跡取りだった弟は3年ほど前に病気で亡くなった。「停電でだめになった商品を捨てているとき、もう全身の力が抜けちゃった」。家族で話し合い、店を閉じることを決めた。店を支えてくれた地元のパートの人は10人ほど。次の働き先は決まっていない。

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 8千人弱の町の人口の半分近…

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