十数年働いた飲食店をやめ、林田浩之さん(39)は岐阜県内のアパートを出た。荷物は寝袋や数日分の衣類をつめたリュック一つ。携帯電話も運転免許証も捨てた。
きっかけは同居していた恋人の浮気だった。相手は、店の同僚。また、人が信じられなくなった。
西へ西へ。あてのない旅は、1年あまりにおよんだ。唯一立ち寄ってみたかったのが、宮崎県西都市だった。2017年の夏、25年ぶりに訪れると、森の中にかつての居場所が残っていた。
幼いころ、父から毎日のように殴られた。物心ついたときには母がおらず、食事も満足に与えられなかった。なんで、こんなひどいことをされるのか、わからなかった。ただ、逃げ出したかった。
小学5年の終わりから1年3カ月を過ごすことになったのが、西都市にあった児童養護施設だった。三度の食事に、あたたかい布団がそこにはあった。
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当時の建物は残っていたが施…
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