英雄と言うが、遺体は放置されている 捜索を続ける人々

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イジューム=喜田尚
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 戦争の現実は人の死だ。第2次世界大戦で焦土となり、今また紛争の現場となっているウクライナで、その現実を掘り起こし、名もなき兵士の尊厳を取り戻す遺体捜索が続いている。(イジューム=喜田尚)

 ウクライナ北東部、人口約5万の町イジュームから激しく傷んだ道を南西へ約50キロ。野原の所々に穴が掘られ、真新しい土が盛られている。

 「ひどいな。馬の下に1人、2人……7人くらいいる」。作業を進める一人が言った。収穫したばかりの小麦畑で金属探知機に反応した場所を数十センチ掘ると、馬の骨の下から何体もの兵士の遺骨が現れた。

 さび付いて原形をとどめないライフル銃や、ドイツ軍の化学兵器に備えたマスクの一部が見えた。はけで周囲の土を落とす。「腰のあたりが大切。ズボンのポケットがあった場所から身元につながる何かが見つかる可能性がある」

27万人が眠る地

 1942年5月。ソ連に属していたウクライナはドイツ軍の占領下にあった。主要都市奪還を目指す「ハリコフ作戦」を仕掛けたソ連軍が逆に壊滅的打撃を受け、この一帯だけで27万人のソ連兵が死亡したか、消息を絶ったとされる。ドイツ軍は、遺体の腐敗で疫病が広がるのを防ぐため、住民に命じて埋めさせた。複数の遺体が折り重なって発見されるのはそのためだ。

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