ナチ前夜なのか?ワイマール憲法100年、ある共通点

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大内悟史
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 ドイツにいま、戦前のワイマール憲法を再評価しようとの機運があります。公布・施行から今年でちょうど100年。ナチスの台頭を防ぐことができなかったと揶揄(やゆ)されることもあった憲法なのに、なぜ? 背景には、皮肉にも、ナチズム再来に対する警戒感があるようです。今と当時を安易に比べる必要はないという姿勢の専門家がいる一方で、ある共通点を指摘する声も出ています。

ワイマール憲法、現大統領も「評価」する理由

 100年前の1919年、憲法制定のための国民議会が開かれたドイツ中部の都市ワイマールで今年2月、演説に立ったシュタインマイヤー大統領はこう述べました。「個人の自由を実現し、(第1次世界大戦の)戦後の危機の真っただ中に、より良い公正な社会のビジョンを生み出した」。男女普通選挙や教育の平等、生存権などを掲げ、戦後にできた基本法(憲法)に通じる民主性と先進性を備えていたワイマール憲法の「良い面」に着目し、強調した発言です。高級紙フランクフルター・アルゲマイネも「かつては呪われ、今では感謝」などの論考を載せました。

 「悪い時代の良い憲法」とも言われるワイマール憲法が注目される理由はなにか。ひとつには、2015年の難民危機以来、欧州を覆う移民や難民を排斥しようとする動きが挙げられます。ドイツでも、大連立を組む2大政党に次いで、直近の総選挙での得票率が12・6%の新興右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が今や野党第1党になりました。大統領の発言の背後には、AfDがワイマール以来の憲法が大切にしてきた人権などの理念を敵視し、ナチズムへの反省とともにあった戦後ドイツの政治文化をないがしろにしようとしていることへの懸念があるとの見方があります。新聞やラジオでは「ナチズムは再来するのか?」をテーマに歴史家や政治学者、記者らが議論。それをまとめた本(原題「ワイマール状況?」)も昨年出版され、話題になりました。

■「ナチ前夜」なのか…

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