花園とともに生きる ラグビーがつなぐ「家族」の縁

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有田憲一
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 20日に開幕したラグビーのワールドカップ(W杯)。北は札幌から南は熊本まで。試合会場の中で、実に90年。最古の歴史を誇るのが、東大阪市花園ラグビー場だ。幾多の名勝負が生まれたのはもちろん、周辺の人たちの人生にも影響を与えてきた。

 花園ラグビー場は社会人の近鉄ライナーズの本拠。1981年から10年間、ここで暮らす少女がいた。

 法学者の谷口真由美(44)だ。ジェンダーや国際人権が専門。幼少期の経験が「私の人生観を大きく形作った」という。

 スタンドの下に、高校を卒業したての部員ら約30人が住む合宿所があった。現役時代に近鉄の選手でならした父はコーチ。寮母の母、1歳違いの兄と家族4人で住み込んだ。ラグビーに関心は無かったが、次第に環境になじんでいった。

 兄と共用だった8畳の子ども部屋は、試合になるとすぐ外にテレビ中継車が止められた。窓のすき間から排ガスが室内に充満するので、仕方なく客席で過ごした。自然とルールや戦術を覚えた。

 縄跳びやバドミントンで遊び、年越しそばやおせち料理を一緒につまんだ部員は、家族同然。けがでプレーを断念する者、努力しても結果を出せずに去る者もいた。「誰もがやめたくてやめたんじゃない。どうしようもない理由がある」。谷口は、日の当たらないもの、弱者への配慮に欠ける世の中であってはならないと考えている。

 忘れられない「兄」がいた。人間性が表れる地味な作業、道具の手入れを誰よりも真面目に、丁寧にこなす新人。来てわずか1年で花園を去った。

 「そんなことしかできること…

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