(小説 火の鳥 大地編)28 桜庭一樹 ともかくこれをご覧あれ!

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 ぼくは鳥の首のミイラを、帝大工科大学の田辺保に託し、三田村家に帰宅した。

 まだ夕方なのに、父ももう帰ってきていた。薄暗い居間でぼーっと煙管(きせる)を吹かしながら、ぼくを見上げ、「どうだった?」とかすかな期待を込めて聞いた。

「キジ科の孔雀(くじゃく)に似た何かの鳥の首だって。あまり興味を持ってもらえませんでしたよ」

「そうか……」

「その後、田辺保くんと会って。しばらく預かりたいと言われ、渡してしまいました」

 父は「ふん!」とつぶやくと、ゴロリと横になり、

「あぁ、何もかも馬鹿馬鹿しい! 今日も金策のため駆けずり回ったが、芳しくなかった。火の鳥、か……」

 ぼくは居間を出て廊下を歩きだした。そのとき父の悲しげな声が聞こえてきた。

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「未知の力を持つ妖獣なんて…

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