(小説 火の鳥 大地編)27 桜庭一樹 ずいぶん両極端な賭けじゃないか

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 ――月光に照らされる砂漠の廃墟(はいきょ)、楼蘭王国。緑郎を始めとする火の鳥調査隊の面々は、焚火(たきび)を囲んで腰掛け、固唾(かたず)を飲んで、三田村要造の告白を聞いていた。

 と、マリアが苦しげに起きあがり、「ま、待ってください……」とささやいた。

「こ、こんな話はうそです。わたしは大滝雪之丞なんて男は知らない。楼蘭王国にきたのは、犬山と、この間久部少佐たちだけです。し、信じてください……」

 緑郎がマリアと三田村要造の顔を不思議そうに見比べる。猿田博士はマリアの額に浮かぶ汗を甲斐甲斐(かいがい)しく拭きながら、

「いや、マリアさん。三田村さんはいま、噓(うそ)をつくことができん。さきほどの貴女(あなた)と同じでな。我々が開発した自白剤は効き目抜群なのじゃ」

「で、でも……。わたしはほんとうに知らない……」

 三田村要造が苦しそうに笑って「楼蘭の笛吹き王女マリアよ。おまえは理由あって、その身に降りかかったたくさんの恐ろしい出来事を忘却したのだぞ……」と言った。その不吉な声色に、マリアだけでなく、芳子や正人まで思わずぶるっと体を震わせた。

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「よし、話の続きを聞こう。そ…

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