鳥獣戯画の寺救え、クラウドファンド活用 台風被害復旧

田中章博
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 国宝「鳥獣人物戯画絵巻」(平安時代鎌倉時代)が伝わることでも知られる京都市右京区の高山寺(こうさんじ)は、昨年9月の台風21号で金堂が損壊するなど大きな被害を受けた。復旧には億単位の費用がかかるとみられ、国内外から支援を求める声が上がり、寺はインターネットで支援を募るクラウドファンディング(CF)に乗り出した。

 寺伝によれば、高山寺の創建は奈良時代末の774年に光仁(こうにん)天皇の勅願によって開かれたと伝わる。鎌倉時代に中興の祖・明恵(みょうえ)上人が学問や芸術を奨励したこともあり、ウサギやサルなどの動物を擬人化した絵が有名な「鳥獣戯画」などの国宝や国重要文化財が寺に集まった。寺は世界文化遺産にも登録されている。

 寺の説明では、台風の被害は昨年9月、境内で強風が吹き、樹齢100~300年の杉やヒノキが300本以上倒れた。金堂は巨木2本が屋根に倒れかかり、建物が傾くなどで半壊した。明恵上人坐像(国重文)が安置された開山堂や宝物の収蔵庫も倒木で屋根が壊れてしまった。

 被災後、ヘリコプターを使って倒木を搬出した。現在も金堂の屋根の修理や、紅葉で知られる表参道の石垣の積み直しなどの復旧工事が進行中で、来年3月までに終える見通しだ。執事の深津秀治(ふかつしゅうじ)さん(31)は「寺の長い歴史の中で火災や水害に度々遭い、中世には戦災にも遭いながら乗り越えてきた。台風災害としては経験のない規模です」と話す。

 国宝の石水院などは拝観できるが、全体の復旧工事には4億8千万円がかかるとみられる。7割は文化庁の補助を受けるが、拝観料に頼る寺の負担は大きく、4500万円を目標にCFで支援を募ることを決めた。

 支援に賛同する声は海外からも上がる。ロンドンの大英博物館でマンガ展を企画した日本美術研究者のニコル・ルマニエールさんは、日本マンガの源流とも言われる鳥獣戯画を高く評価し、「世界的な文化遺産の鳥獣戯画など日本の芸術文化を伝承してきた高山寺の復旧には幅広い支援が必要です。私も具体的に応援したい」と話す。

 CFは朝日新聞社の運営するA―port(https://a-port.asahi.com/projects/kosanji/別ウインドウで開きます)で12月28日まで受け付ける。寄付額に応じ、CF限定の鳥獣戯画をあしらったお守り(3千円)▽鳥獣戯画限定朱印帳(1万円)▽倒れた杉を使った朱印帳(3万円)▽鳥獣戯画甲巻の原寸大複製(50万円)などの返礼品を贈る。問い合わせはコールセンター(03・6869・9001)。(田中章博)

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