缶コーヒー、愛されて半世紀 躍進の契機は大阪万博
手軽に持ち運べて味わえる「缶コーヒー」が今年、誕生から半世紀を迎えた。ミルク入りコーヒーを缶に詰め、1969年に世界で初めて市販したのがUCC上島珈琲(神戸市)。コーヒーの種類や飲み方が多様化するなか、茶と白、赤の3色を基調とするデザインとともに味を守り続ける。
神戸市北区の商業施設で9月末、挽(ひ)きたてのコーヒーが来店客にふるまわれた。カップルや家族らが香りや風味を楽しみながら、「おいしい」と笑みをこぼす。10月1日の「国際コーヒーの日」に合わせ、全日本コーヒー協会が企画した。この飲み物を身近な存在へと広めた立役者こそ、缶コーヒーだ。
開発のきっかけは、UCC上島珈琲の創業者、故上島忠雄氏が抱いた「もったいない」との思いだった。家庭でコーヒーを飲むことが珍しかった時代。鉄道駅の売店でびん入りのコーヒー牛乳を買って飲む風景が見られたものの、発車のベルが鳴り出すと、しかたなく飲み残して売店に返さなければならなかった。
そこで、持ち運べる容器として食品用に使われていた缶に注目。コーヒーを入れるには、缶の内側を覆うコーティングの加工がとくに難しかったという。コーヒーに含まれる成分が缶の鉄分と反応すると、味が変質してしまう。ミルクは高温の殺菌処理が必要なため、熱でコーヒーの風味が悪くなる問題にも向き合った。人工甘味料を一切含まない、牛乳を使った「UCCミルクコーヒー」(発売時は「UCCコーヒーミルク入り」)がこうして誕生した。
社員らは当初、駅の売店で買…
【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら