南北朝鮮トップ、哲学の奇妙な一致 読めない行動の背景

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ソウル支局長・神谷毅 編集委員・牧野愛博
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 朝鮮半島の隣国は何をめざしているのか。元徴用工判決から対日関係が「過去最悪」レベルに落ち込んだ韓国と、非核化をめぐる米朝協議の継続をうたいながら軍事挑発を続ける北朝鮮。それぞれの国を率いる文在寅(ムンジェイン)大統領と金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が描く政策の背景と思惑を、日米の専門家の話や韓国での現地取材で読み解いた。

 「日本に二度と負けない」

 文在寅大統領は、日本が輸出手続きを簡略化できる輸出優遇国のリストから韓国を外した8月2日、こう述べて、日本を強く批判した。その後、日韓の軍事情報包括保護協定GSOMIAジーソミア〉)破棄を表明。報復措置を緩める気配はない。なぜなのか。

 文氏がめざす最大の目標は二つ。支持層である進歩(革新)の「政権維持」と「南北関係の改善」だ。

 韓国の革新は米国について、冷戦の当事者として南北分断をもたらした元凶で、1980年代までの民主化運動で打倒の標的となった独裁政権の後ろ盾でもあったとみる傾向がある。

 文氏は革新の盧武鉉(ノムヒョン)政権(2003~08年)の幹部を務めた。文氏を語る際に盧氏の存在は欠かせない。ともに人権派弁護士として活動し、政治の世界では盧氏を支えた。文氏が自伝に付けたタイトルは「運命」だ。

 盧氏は大統領時代、支持層の期待と異なり、韓米関係の強化が外交に必要だと判断した。米国との自由貿易協定(FTA)締結やイラク派兵に踏み切り、保守から「現実的だ」と評価を得る一方、革新からは批判された。退任後は保守の李明博(イミョンバク)政権のころに検察の捜査を受け、自ら命を絶った。

 文氏は17年、大統領就任直…

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