イチゴカレーの野望 きっかけは「ジャムかけると合う」

春山陽一
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 埼玉県越谷市イタリアンシェフが手がけようとする「イチゴカレー」には、夢が幾重にも込められている。地産地消、障がい者支援、食品の廃棄ロスや農家の人手不足解消、さらには小麦アレルギー対策も。一見欲張りなこの活動の資金確保にはクラウドファンディングも利用し、多くの人をつなげ支えてもらう夢も追っている。

 夢のスタートは2016年だった。キーワードは「もったいない」。越谷市東越谷6丁目でイタリアンレストラン「カポナータ」を営むオーナーシェフ鈴木実さん(54)が、ドレッシングタイプの「イチゴのかけジャム」を商品化した。市内のイチゴ農家で廃棄処分になる可能性があったB級イチゴに目をつけた。フードプロセッサーでつぶしたイチゴと砂糖を煮詰めてつくる。ヨーグルトやパンなどにかけて食べるタイプだ。

 もうひとつの「もったいない」は米農家から出る「くず米」だ。鈴木さんはくず米からできる米粉の使い道を思案する中で、カレーのとろみをつける小麦粉の代用になるのではと思いついた。小麦アレルギー対策にもうってつけだった。

 レストランで料理を出すと、「小麦粉は入っていませんか」とたびたび尋ねられることがあった。「食物アレルギーのお子さんは年々増えていて、対策は必須だと日頃から考えていました」と鈴木さんは話す。

 イチゴとカレーの掛け合わせもお客さんの雑談がきっかけだった。レトルトのカレーにかけジャムをかけるとおいしかった、という声を聞き、試食してみた。甘さと香りが広がってコクが出る。商品になると確信したのが5月だった。

 こうした取り組みは思いがけない方向にも“夢”をふくらませた。かけジャムは、障がいのある人たちと店で作るようにしていた。「自分たちが関わっている」という誇りを感じて作る彼らに、米粉を作る作業も手伝ってもらおうと考えた。そうすることで「障がい者の安定した仕事の機会を増やせる」と気づいたからだ。併せて農家の人手不足まで補える。

 市役所と打ち合わせる中で、レトルトのイチゴカレーは地産地消の備蓄用食材にもなるのでは、という話も出てきた。被災地に「越谷」の名が入った食材を送れれば、市のPRや活性化につながる、というのだ。

 事業を軌道に乗せるまでの資金調達にも糸口が見つかった。つきあいのある信用金庫に相談すると、朝日新聞社のクラウドファンディングサイト「A―port」を紹介され、さっそく申し込んだ。インターネットでつながる不特定多数の人たちから薄く広く資金提供を受ける仕組み。11月30日まで募集しており、目標総額は50万円だ。問い合わせはカポナータ(048・967・0077)へ。(春山陽一)

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