81歳「もう住めない」 伊豆諸島、台風で損壊600軒
台風15号は東京都の伊豆諸島にも大きな爪痕を残した。少なくとも6島で600軒以上の建物が損壊し、停電や断水もあった。修繕に必要な資材の不足も目立つ。「もっと島の状況を知ってほしい」。そんな声も上がる。
伊豆諸島最大の大島。南部の差木地(さしきじ)地区では、壁が壊れたり屋根が吹き飛んだりした建物が多く目についた。電柱は折れ曲がり、電線を修理する作業車が道の片側をふさぐ。
「ここにはもう住めないかな」。13日午後、自宅の片付けに追われていた榊ヒサエさん(81)は、土砂や木くずが散乱した部屋を見つめながらつぶやいた。
台風が通り過ぎた9日未明、榊さんは一人で部屋にいた。強風を恐れ、眠りにはつけなかった。「ゴォォォー」という激しい風の音とともに天井がミシミシと音を立てたと思うと、屋根が吹き飛ばされた。島で観測された最大瞬間風速は47・1メートル。「今まで生きてきた中でこんなすごい風、初めてだと思った」
隣家に身を寄せて命に別条はなかった。だが翌朝、目にしたのは内部の構造がむき出しで水浸しになった自宅の姿。何より仏壇に安置していた夫らの位牌(いはい)がなくなったことが悲しかった。結婚以来、60年近く住み続けた。「ずっとここで生きてきたから。さみしくない人なんていないよね」。いまは近くの空き家で過ごす。息子や友人たちが片付けを手伝ってくれることが支えだ。
島南部の都立大島海洋国際高校では、強風で教室や体育館などの窓ガラス約180枚が割れた。
「大島の被害をもっとたくさんの人に伝えてほしい」と三好康弘副校長(49)。特に被害が激しかったのは海側の校舎だった。全教室に雨やガラスの破片が流れ込んだ。職員たちが手分けして、教室の片付けや校舎をブルーシートで覆う作業に当たっている。
グラウンドには細かいガラス片が散らばっており、「安全面を考えるとしばらく使えない」。被害が少なかった棟や生徒の寮で週明けから授業を再開させるが、21~23日の文化祭は中止せざるをえなかった。
「我々ができる限界は超えたと思う。これまでと変わらない学校生活にいつ戻れるのか見通せない」。体育館にかけられた時計は傾き、短針が「4」の近くを指して止まったままだった。
■かき入れ時、観光に打撃…
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