恐れに屈した日本、トランプ氏の侮り 互恵主義はどこへ

有料記事特派員リポート

ビアリッツ=青山直篤
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 トランプ米大統領の記者会見場は、大西洋に面した高台にある美しい洋館だった。8月26日午後、仏ビアリッツでの主要7カ国首脳会議(G7)が終わり、マクロン仏大統領とともに会議の成果を発表する場だ。

 プレスセンターからのバスを降り、会見場まで早足で歩いた。トランプ氏に質問するためには、少しでも早く部屋に入り、視界に入る前方の席をとる必要があるためだ。この日は、トランプ氏と安倍晋三首相が大枠で合意したばかりの日米貿易交渉に関連して、どうしても確認したいことがあった。

 9月下旬に署名を目指す日米間の合意では、米側が特に重視する牛肉や豚肉の関税を、日本側が環太平洋経済連携協定(TPP)の水準まで下げる一方、米側がかけている乗用車(2・5%)への関税は、直ちに削減対象にはならないことになった。ただ、トランプ氏はこの2・5%の関税とは別に、日本や欧州連合(EU)からの輸入車に追加関税を発動するという「脅し」をかけている。自動車の輸入が米国の産業基盤を脅かし、安全保障を脅かすという理屈で、米通商拡大法232条に基づく措置だが、合意の段階では明確な言及がなかった。

 日本政府は「232条に基づく措置をとらないということは、昨年9月の日米首脳会談における首脳会談のやりとりを含め直接確認をして、そういうこと(発動)はない」(菅義偉官房長官)との認識だが、米側はどうなのか。答えられるのは、トランプ氏本人しかいない。

トランプ氏を直撃

 トランプ氏の会見場の前方の列はいつも、米メディアの「番記者」用に確保されている。そのすぐ後ろの3列目の席が取れた。後から来て隣に座ったのは、ロイター通信のホワイトハウス担当記者。彼が当たれば、続けて指名されやすい。そう思っていたら、質疑が始まってまもなく、トランプ氏がこの記者を名指しした。質疑が終わり、間髪入れず手を挙げると、当たった。

 「Go ahead(質問どうぞ)」

 「日本からの輸入車に対して、安全保障を理由とした232条の関税の適用を今もなお検討しているのですか」

 トランプ氏は答えた。

 「(輸入車関税の発動は)現…

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