シンギュラリティーにっぽん
米巨大IT企業「GAFA(ガーファ)」が、集めた膨大なデータを武器に、市場の支配力を強めている。国家さえも揺さぶるパワーを抑えようと、欧州連合(EU)を中心にGAFA包囲網が広がる。日本はどこまで有効な手立てを打ち出せるのか。(大津智義、編集委員・堀篭俊材)
シンギュラリティー:人工知能(AI)が人間を超えるまで技術が進むタイミング。社会が加速度的な変化を遂げることを指すこともある。変化に伴って「見えないルーラー(支配者)」も世界に現れ始めている。
「手数料30%」突然の通告で利益吹っ飛ぶ
今年に入って届いた1通の英文メールが、東京都内のアプリ開発会社の運命を一変させた。
「あなたの会社のアプリがガイドラインに準拠しないことを確認しました」
送り主は、GAFAの一角である米アップル。ガイドラインとは、iPhone(アイフォーン)にアプリを提供する企業などに対してアップルが独自に定める規約のことだ。「2週間以内に対応を取らなければ、アップストアから削除する」という趣旨のメッセージも添えられていた。
問題視されたのは決済手段だった。従来は合意に基づき、アップルを通さず利用者に課金してきたが、メールでは突然、アップルが提供する決済手段を使うよう迫られた。
それだけではない。アプリでの売り上げの「30%」を手数料として同社が取るという内容も含まれた。通常のクレジット決済では5~10%程度が相場とされる。利益が吹き飛び、軌道に乗りつつあったビジネスは一転、存続すら危うくなった。
最初はアップル以外の決済手段も残して一定の利益を守ろうとしたが、何の通告もなくアプリを一時削除された。他のアプリ配信も止められる恐れがあったため、すべてアップルを通すよう切り替えざるを得なかった。「30%は高すぎる。それでも受け入れざるを得ない」と40代の創業者は話す。
その結果、利益の大半が消え、赤字になる月が出るなど経営は綱渡りが続く。「仮想と現実を融合させた新たなアプリを開発したのに、市場規模が大きくなったのを見計らってアップルが利益を奪いにきた」。創業者は、アップルによる「突然のルール変更」に憤りを隠せない。
スマートフォンが世界中で普…
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