横浜市がカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を表明したことをめぐる論戦が3日、市議会で始まった。2017年の市長選の前から「白紙」と繰り返してきた林文子市長が誘致へとかじを切ったことに対し、反対する会派からは「市民を欺いた」などと批判が相次いだ。

 市はこの日、市議会定例会にIR誘致のための費用2億6千万円を含む補正予算案を提出。市議会は「自民党・無所属の会」と公明党で議員定数(86人)の6割を占め、補正予算案は可決される公算が大きい。

 この日の質疑で、自民党議員は「熟慮と覚悟の上での決断」と誘致表明を評価。「IRにはまだ反対の声が多い。ガラス張りの情報公開で風向きを変える必要がある」と求めた。

 林市長は「IRは国家的なビッグプロジェクト。成功には理解と納得、賛同が必要」と応じ、早い時期に市内の全18区で市民を対象とした説明会を開く考えを示した。

 一方、公明党議員は質疑の中で「本格的な検討が進み、詳しい中身が作られるのはこれから」とIRへの賛否を留保した。支持者に慎重論が根強いことに配慮したとみられる。

 他の会派と無所属議員は反対一色。第2会派「立憲・国民フォーラム」の議員は「市長選で掲げた『白紙』という公約を破棄し、誘致に転じるのは問題だ」と批判。共産党議員は「民意を問うことなく誘致するのはだまし討ちだ。カジノ事業者が狙うのは横浜市民の懐だ」と訴えた。

 カジノに反対する市民団体などの間では、是非を問う住民投票を実施するための条例の制定や、市長のリコール(解職請求)運動を模索する動きも出ている。市役所前ではこの日も市民団体が「カジノはやめろ」と訴えながら署名を集め、通行人らが応じる姿が見られた。(武井宏之