地元が運営続けて112年、滋賀の私立図書館が苦境に

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山中由睦(よしちか)
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 地域住民が112年にわたり運営してきた、全国でも珍しい滋賀県の私立図書館が苦境に立たされている。文庫や絵本に加え、大正期の夏目漱石の全集などもそろうが、資金難で蔵書を充実させるのが難しく、老朽化した建物もほとんど改修できない。近くに公共図書館も整備され、利用者も少ない。自治体や大学に運営を委ねる声も上がるが、先行きは見通せない。

 琵琶湖の北端に近い、同県長浜市木之本町の江北(こほく)図書館。1902年、木之本町に隣接する旧余呉村(現・長浜市)出身で弁護士の杉野文彌が「郷里に学びの場を」と私財を投じて杉野文庫を開設。これを継ぐ形で07年にできた。75年から旧伊香農協の建物を使う。

 今は小学校長や自治会長を経験した50~80代の住民が、公益財団法人の理事となり運営している。貸し出しは無料。住民の職員5人が日常業務にあたる。

 蔵書は約5万冊。文庫や専門書、子どもが手に取りやすい絵本や図鑑などのほか、坪内逍遥が書いたシェークスピアの翻訳書、大正期に発刊された夏目漱石の全集、明治大正期に活躍した言論人・杉浦重剛の全集もある。

 そんな図書館に地元住民も誇らしげだ。近くに住む河原林二男さん(87)は「子どもの頃から常に身近にある図書館。片田舎の数少ない文化施設だけど大切な存在です」と話す。横田誠一さん(70)は「資料館のような雰囲気。郷土の歴史が学べて貴重」という。

運営費乏しく、建物改修おぼつかず

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 しかし、運営がおぼつかない…

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