身代金要求ウイルスとの闘い 年約500件解析、特許も

有料記事サイバー攻防

末崎毅
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凄腕しごとにん・吉川孝志さん(34)

(三井物産セキュアディレクション 上級マルウェア解析技術者)

 数年前の夏。発信元をたどりにくいインターネット空間、ダークウェブの掲示板で不審な書き込みを見つけた。悪意あるソフト「マルウェア」の名前と値段が記されていた。いわゆるウイルスのことだ。感染するとネットバンキングへの不正送金を指示するマルウェアの種類で、販売後のサポートもついているようだった。当時は被害が連日のように報じられていた。

 掲示板に残されたわずかな痕跡から、本人につながりそうなSNSの情報を特定。それらを知り合いの警視庁捜査員に提供したところ、容疑者の逮捕に結びついた。警視庁からは会社に感謝状が贈られた。

 犯人捜しにまで至るケースは珍しいが、マルウェアに関する情報は日々チェックしている。ネット掲示板などにある「不審なファイルがある」「パソコンの動作がおかしい」といった書き込みをもとに未知のマルウェアを調べ、問題になりそうな対象を見つけたら解析を試みる。結果はブログや講演会で発信している。同業他社ではお手上げだったマルウェアの解析を頼まれることもあるという。上司の関原優さんは「幾重にも解析を阻害する機能があるような高度なマルウェアも解析してしまう」と、その能力を評価する。

母がくれたパソコン

 母子家庭で育った。テレビゲーム機は買ってもらえなかったが、中学の合格祝いとして母が「将来のために」とパソコンを奮発してくれた。ゲームで遊んだり、実家の花屋のチラシをつくったりしていたところへ、ある日、一通のメールが届いた。

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