メイド・イン・ガーナ、世界一への挑戦 出戻り移民活躍

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アクラ=国末憲人
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 留学や出稼ぎで欧米に出て行ったきり帰ってこない――。人材の流出は、アフリカにとって、大きな課題だった。その状況に変化が生まれつつある。いったん国を出た人やその子孫「ディアスポラ」が、故国にビジネスチャンスを見いだし、帰郷して新事業を立ち上げるようになった。アフリカは近年、援助の対象としてよりも、ビジネスや投資の対象として注目されつつある。そのトレンドに最も敏感なのがディアスポラたちだ。(アクラ=国末憲人)

 ドアを開くと、甘い香りが流れ出た。作業台の上に、微粒化されたカカオマスがどろっと広がる。

 西アフリカガーナの首都アクラ郊外。ガレージを改装したチョコレート工場「スイート・アート・カンパニー」を訪ねると、ヘラで丹念に練り回し型枠に流し込む作業を、ルース・アモアさん(35)が従業員3人とともに進めていた。

 日本だとロッテのチョコブランド名として定着しているガーナは、チョコの原料カカオの生産国。コートジボワールに次ぐ世界第2の規模を誇るが、そのほとんどは原料のまま欧米に出荷されてきた。アモアさんは地元での商品化を目指し、5年前に同社を創業。国際的な見本市に出展するまで成長した。

 「高級チョコというと、ベルギースイスばかり話題になるじゃないですか。世界一のものをガーナでつくりたいと思ったのです」。設備投資や原料確保に費用がかり、地元ではなかなか手を出せないでいた事業に乗り出した。

 アモアさんは、ガーナ移民の両親のもとに英国で生まれ育った。プリマス大学で人材育成を学び、ロンドンの企業で人事担当者として安定した生活を築いたが、その地位をなげうった。「アフリカにこそチャンスがあると考えました」

 アモアさんの工場は、アクラ中心部から車で40分ほどの郊外。運転に苦労するほど穴ぼこだらけの道が続く。一部の都市をのぞくと、アフリカで少し街道を外れると未舗装が普通だ。このインフラ整備の遅れは、アフリカ経済の弱点。アモアさんがガーナで新事業を立ち上げた際、周囲が大反対したのも、このビジネス環境を心配してのことだ。

 「すぐにしょげて戻ってくるよと、ロンドンの友人にからかわれました」

 確かに苦労の連続だった。最…

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