砲撃、殺された一家、抑留… 書き続ける93歳の意地
堀田あゆみ
「過酷な体験をしながら『加害』の意識を持つようになったのは、何かきっかけがあったのですか」「シベリア抑留の責任は、抑留したソ連と抑留を認めた日本とどちらが重いと思いますか」……。
終戦から74年の夏。松本茂雄さんは、川崎市の自宅で毎日のように筆を走らせている。93歳。自身の戦争体験について5月末に地元で講演した。参加者の感想や質問がびっしり書かれたアンケート用紙の束が届き、一つ一つに回答をしたためる。
松本さんは1945(昭和20)年2月、19歳のときに学業半ばで徴兵された。8月、旧満州(中国東北部)で旧ソ連軍と激突。戦後はシベリアに3年間抑留された。過酷な労働で肺を病み、自動車販売会社に就職できたときには31歳になっていた。
「20代をすべて戦争に奪われました」。人より後れを取ったという思いが強く、その後はひたすら仕事に打ち込んだ。
ここから続き
50代で転職して企業の管理…
【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら