「人を飼いならしていいのか」 身体拘束なき精神医療へ

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聞き手 編集委員・大久保真紀
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 日本の精神医療は、海外に比べて多い病床数や身体拘束、長期入院など、とかく人権上の課題を指摘されてきた。そんな中、1879年設置の東京府癲狂院(てんきょういん)を始まりとする東京都立松沢病院が、身体拘束を大幅に減らすなど大胆な改革を進めている。7年前に院長となり、陣頭指揮を執る斎藤正彦さんが目指す医療とは――。

 ――7年前の院長着任あいさつで、「患者を身体拘束してまともな精神医療ができるのか」と職員に問いかけたそうですね。

 「院長就任が決まり、20年ぶりに松沢に戻りました。直後の病棟回診で女性に声をかけられました。僕が約30年前に担当していた統合失調症の患者でした。『先生がいたときと同じ部屋、ここは私のベッド』と案内してくれたベッドに拘束帯がセットされていました。僕の困惑を読み取った彼女は『私が悪いの、3カ月前に転んだの。拘束は晩ご飯と朝ご飯の間だけだから』と拘束が自分の落ち度であるかのような言い訳をした。それを聞き、ここまで人を飼いならしていいのかと思いました」

 ――精神科病院の身体拘束は100年以上前から続いています。

 「松沢の前に院長をしていた埼玉の和光病院には隔離室も拘束帯もなく、拘束はゼロです。民間の認知症専門病院である和光に比べ、公立の松沢は医師は2倍、看護師も1・3倍います。松沢にできないはずはないと思いました」

 ――反発もあったそうですね。

 「公然と異を唱える人はいま…

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