展示中止要求、「憲法21条」違反か 知事と市長が応酬

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佐藤英彬 柏樹利弘 江向彩也夏
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 愛知県で開かれている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」(津田大介芸術監督)の企画展「表現の不自由展・その後」が中止された波紋が広がっている。実行委員会会長の大村秀章愛知県知事と会長代行の河村たかし名古屋市長が、表現の自由を保障する「憲法21条」を巡って鋭く対立。中央政界や美術界などからも、表現の自由を巡る発言が相次いだ。

 「一連の発言は憲法違反の疑いがきわめて濃厚だ」

 5日午前、愛知県庁で定例会見に臨んだ大村知事は、河村市長から送られた抗議文を手に語気を強めた。

 「表現の不自由展・その後」は、展示の機会を奪われた作品を紹介する狙いで、2015年に東京のギャラリーで開かれた展覧会の続編にあたる。焦点となっている作品は、慰安婦を表現した少女像や、昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品。少女像は、韓国人彫刻家のキム・ソギョンさんと夫のキム・ウンソンさんが「元慰安婦の苦痛を記憶する」ための象徴として制作した。「平和の少女像」とも呼ばれ、今回はミニチュアを含めて2体を展示していた。

 大浦信行氏の「遠近を抱えて」は、昭和天皇の写真などをコラージュしている。富山県立近代美術館で非公開となり、図録が焼却されたことから、作品が燃えるシーンのある映像作品「遠近を抱えてPartⅡ」も今回出品していた。

 河村氏は2日に会場を視察した後、「表現の不自由という領域ではなく、日本国民の心を踏みにじる行為であり許されない」などとする抗議文を大村氏に出し、展示の中止などを求めた。日本維新の会杉本和巳衆院議員(比例東海)も3日、「公的な施設が公的支援に支えられて行う催事として極めて不適切」として、展示の中止を求める要望書を出していた。

 実行委事務局などには1日の開幕以来3日間で3千件近い抗議の電話やファクス、メールがあり、中には「撤去しなければガソリン携行缶を持ってお邪魔する」というファクスもあったという。このため大村氏と津田氏が協議し、来場客の安全や芸術祭全体への影響を考慮し、3日夕に中止を発表した。

「税金でやるからこそ」「血税でこれはいかん」

 大村氏は5日の会見で、「税…

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