香月泰男のシベリア・シリーズ一堂に 過酷な記憶追体験

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安斎耕一
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 山口県長門市出身の洋画家、香月(かづき)泰男(1911~74)の代表作といえば、「シベリア・シリーズ」だろう。戦争とシベリア抑留の過酷な体験を重厚な筆致で描き連ねた全57点が、所蔵する山口県立美術館で8年ぶりに公開されている。同時に、同シリーズの制作過程がわかる素描や晩年の軽やかな版画作品も並べられ、シベリアだけでない多層的な香月の魅力に迫っている。

 山口県美開館40周年記念のコレクション特別展「香月泰男のシベリア・シリーズ」(18日まで)で、同館が試みた点は大きく二つある。

 一つは、大作が多く全作での展示機会が限られていた同シリーズを一堂にそろえたことだ。

 香月は戦中に召集され、旧満州へ。敗戦後はシベリアに抑留され、47年に復員した。

 横たわる死体や夜空に輝く星、復員への点呼を待つ自分と仲間たち――。従軍から抑留の約4年にわたる記憶を、74年に急逝するまで描き続けた同シリーズは、香月の戦争体験の回顧録的な趣がある。

 本展は制作年順ではなく、香月が見たり体験したりした物事の順で展示。観客が追体験できるような構成だ。

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 黒色を基調にゴツゴツとした…

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