ニワトリ1羽の稼ぎ2~3円 資本の論理に答えはあるか

有料記事経世彩民

ワシントン=青山直篤
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経世彩民 青山直篤の目

 首都ワシントンから山間部へ。たった1時間半ほど車を走らせただけでカーナビの表示は出にくくなり、マイク・ウィーバーさん(67)の家に着くころには携帯電話はまったくつながらなくなっていた。

 米東部ウェストバージニア州。南北に連なる山脈のはざまに農家が点在する。ウィーバーさんもこの1月まで、二つの鶏舎で約9万羽のニワトリを飼う養鶏農家だった。

 「もうけはニワトリ1羽当たり、2、3セントだったよ」と、ウィーバーさんは言う。単位は「ドル」ではなく、「セント」だ。日本円にして2~3円。

 養鶏を続けた18年間、ウィーバーさんの報酬は一度も上がることはなかったという。なぜなのか。

巨大資本の「歯車」に

経済という言葉の語源「経世済民」には「世をおさめ、民をすくう」という意味があります。原則、毎週火曜朝に配信するコラム「経世彩民」では、記者が日々の取材を経て思うこと、伝えたいことを色とりどりの視点でつづっていきます。

 世界一の生産性を誇る米農業は、巨大な資本と技術を持つ「ビッグ・アグ(巨大なアグリビジネス)」が支配する世界だ。養鶏では上位3社がシェアの過半を占める。ウィーバーさんもそのうちの1社と契約を結び、ひなや飼料の供給を受けて養鶏に携わっていた。

 「ビッグ・アグがでかくなるたびに農家の取り分は減った。ものすごくもうけているのに、その金はウォール街に流れたんだ」

 ウィーバーさんはビッグ・アグの支配に異を唱えた。巨大資本への規制を求めて議会に働きかけたり、集団訴訟に加わったりした。しかし、規制は実現しないばかりか、待っていたのは巨大資本の「仕返し」だった。

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