「裸婦像への怒り」空の台座で訴え 告発する現代アート

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前川浩之
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 8月1日に始まる国内最大規模の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で、アートと調査報道が接近している。芸術監督に就いたジャーナリスト津田大介さんの意向で、米国の報道機関がアニメ化した記事を現代美術作品として出品し、日本の彫刻家が米公文書を調べて分かった事実を考えさせる作品を展示する。暴いた事実を深く伝えるためにアートの「心に刺さる」表現手法が生かされている。

 「The Office of Missing Children(行方不明児のオフィス)」は、手描きイラストの6分55秒のアニメーション作品。中南米からの移民の子どもが米国境で親から引き離され、米アリゾナ州の空きビルで軟禁状態にされていたというスクープ報道の一部だ。米国の非営利の調査報道機関「The Center for Investigative Reporting(CIR、調査報道センター)」が昨年7月に記事として報じ、昨年末にアニメにしてウェブサイトで公開した。

 CIRのクリエーティブディレクター、マイケル・シーラーさん(45)は「調査報道なので、子どもを連れ去ったワゴン車の車種やサボテンの種類まで、取材で裏付けがある表現にこだわった。そのうえで、子どもの表情や動き、音楽をつけ、アニメの力で感情移入しやすくした」と語る。トリエンナーレでは、米ニューヨークの収容施設で未成年者を独房に閉じ込めていたことを暴いた「The Box(箱)」など、CIRの六つの記事動画が「現代美術」として展示される。

 1977年創立のCIRは、米サンフランシスコ近郊を拠点に記者ら約70人を抱える調査報道専門機関。全米500のラジオ局で「Reveal(暴露)」という番組を毎週流し、スマートフォンで聞けるポッドキャスト版は毎週120万回ダウンロードされる。年間予算1100万ドル(11億8千万円)のほぼすべてが慈善団体や個人の寄付だ。最高経営責任者(CEO)のクリスタ・シェーフェンバーグさん(49)は「民主主義を守り、社会に変化を与えるためにいただいた寄付なので、文章では届きにくい層にも響く表現手法が必要だ」と話す。

 米国では2008年のリーマ…

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