元銀行員、人間国宝に 妻に背中押され、三線の芸に専念

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今井邦彦
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 重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定するように、文化審議会が文部科学相に答申した7人のうちの一人は、琉球古典音楽の中村一雄さん(73)。琉球王朝時代、中国から派遣される冊封使(さっぽうし)を歓待するため、歌三線(さんしん)や太鼓の音楽に合わせて舞う「組踊(くみおどり)」が生まれてちょうど300年。そして年号が改まった「節目の年」にもたらされた朗報に、「あらためて、がんばらなければと意を新たにしました」と表情を引き締める。

 決して「芸一筋」の人生ではなかった。終戦翌年に久米島に生まれ、父がつま弾く三線の音に包まれて育ったが、「父は『自分のは自己流だから』と、教えてくれませんでした」。高校卒業後、島の農協を経て銀行に就職。結婚し、長男が生まれた24歳の時、初めて師匠に付いて野村流の琉球古典音楽を学び始めた。

 「まだ、三線は遊び人が弾くものといわれた時代。やるからには芸道を極めなければと、他の人の2、3倍は練習しました。のどを鍛えようと、海に首までつかって歌ったことも」

 転勤した那覇市で教室を開き…

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