登場人物たちの暗い過去 柔らかく進む物語 「水は海に向かって流れる」(田島列島)
松尾慈子
漫画偏愛主義
その肩の力の抜けた絵からは想像できない、奥深い内容に思わずうなってしまう。ともすれば暗い人間関係に陥りそうな過去の出来事がありつつも、なぜか柔らかく物語が進む。主人公の直達(なおたつ)は、高校入学を機に親元を離れたことで、様々な大人と出会い、かつ家族の思わぬ過去も知ることになるが、持ち前のまっすぐな性格は損なわれることなく成長していく。
直達が住むことになったのは、漫画家になっていた叔父が住む一軒家。そこには笑わないOL・榊(さかき)と、女装の占師、メガネの大学教授が同居している。実は榊と直達には浅からぬ因縁がある。その因縁を、子供に関係はないからと直達には知らせたくない榊と、知ってしまったものの知っていると言い出せない直達。
大人にみえる大人たちも、子…
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