もうひとつの選挙戦 SNSの勢いは投票につながるか

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笹川翔平 山下剛 編集委員・須藤龍也
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 もう一つの戦いが、そこにある。手のひらのスマートフォンのなかに。

 なまはげ。秋田犬。秋田名物の映像に安倍晋三首相自民党総裁)の演説の声がかぶさる。「秋田県にはあきたこまち。とってもおいしいお米がありますよね」

 自民党は、参院選で首相が応援に入る選挙区ごとに政権の実績をPRする動画を作成している。「攻めの農政を続けてきた結果、農林水産物の輸出、6年連続過去最高を持続してきました」

 こうした動画を首相は自身のツイッターインスタグラムなどSNSで配信。それに候補者が「応援に勇気づけられました」とコメントをつけてリツイートすれば、首相もまた「最後まで全力で頑張って」と返す。

 政党の幹部や候補者と有権者とがSNSで直接つながることができる時代なのだ。

 選挙カーが候補者の名前を連呼し、候補者が街頭でマイクを握る。事務所から投票を呼びかける電話をかける――。こうした従来型の選挙手法に加えて、各党はネット選挙、とりわけSNSに力を入れる。

 政党が発するメッセージに、SNSの利用者が応えるかたちをつくるのに「成功」したのが、立憲民主党だ。

 2017年の衆院選直前、枝野幸男代表がツイッターで「#枝野立て」と励まされたのが結党の原点でもある。今回の参院選でも、「#令和デモクラシー」「#この夏わたしは変えたい」などハッシュタグ(#)をつけて、SNSでの拡散を意識したテーマで街頭演説をしている。

 「昭和の時代の遺物から令和の新しい政治へ変えていく。あなたの力が必要です!」枝野氏が放つ決めぜりふに反応した支援者の動画が、またスマホを通じて拡散していく。

 他党も、若者に人気の15秒間の動画投稿ができるSNS「TikTok(ティックトック)」にアカウントをつくったり、動画を配信したりと多様なSNSサービスの特性を生かし切ろうと必死だ。

 国会の現有議席は少なくとも、SNSの世界で圧倒的な存在感を発揮しているのが、政治団体「れいわ新選組」だ。

 12日と19日に候補者がそろった街頭演説「れいわ祭」を開催し、「#れいわ祭」は一時トレンドワード入りした。山本太郎代表(参院議員)は街頭演説で聴衆に呼びかける。「好きな角度から写真を撮って、勝手にSNSにアップしていただければ。ご自由にご拡散などをしていただければ」

 ネット選挙によって、有権者は全国どこにいても候補者の訴えを動画で視聴することができる。組織のない団体でも、ツイッターやフェイスブック、ユーチューブ、ウェブサイトとネットをフル活用し、支持の浸透を図ることが可能になった。

 では、こうしたSNSでの活動はどのように拡散し、どこまで届いているのか。

 興味深いデータがある。SNSによる選挙戦の「勢い」分析だ。

 参院選公示日の4日から17日までにツイートされた、各政党に言及した内容(計906万件)を集計すると、最多が自民の277万件(30%)、次いでれいわが159万件(17%)となった。共産党が144万件(15%)、立憲106万件(11%)と続いた。

 朝日新聞社が電話で有権者に聞いた序盤情勢調査では自民、公明の与党が改選議席(124)の半数を大きく上回る勢いで、れいわは立憲、共産からも水をあけられているという集計結果だったにもかかわらず、だ。

電話調査でつかむ「地上戦」と、SNSの「空中戦」でみられるこの違い。秘密はどこにあるのだろうか。膨大なツイッターの中身を分析すると、カギが見えてきた。「拡散力」と「インフルエンサー」の存在だ。

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 朝日新聞は全世界のツイッタ…

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