検証 4K放送は暗いのか③
映像がより鮮明で美しくなるという触れ込みで2018年暮れに始まったBSの4K放送。首都圏のある個人電器店から「『4K放送は暗い』と苦情がきている」との情報が、朝日新聞に寄せられた。同機種・同サイズ・同設定の2台のテレビで、従来の2K放送と4K放送を同時に見比べる実験をしたところ、やはり4K放送の方が暗めに見えることが分かった。
昨年末に始まったBSの4K放送が「暗く見える」との情報が朝日新聞に寄せられました。テレビの問題なのか、放送の問題なのか。原因と対策を追った取材の一部始終を6回のシリーズで伝えます。ご意見や感想は(keizai@asahi.com)にお寄せください。
4Kテレビを専用チューナーにつなぎ、「4Kテレビで4K放送を見る」という状態でこうした指摘が出ているようだ。チューナーや、ケーブルテレビでも受信可能なセットトップボックスの普及率は、4Kテレビ出荷台数全体(約680万台)の2割弱なので、大半の家庭では今後、チューナーを付けて4K放送を受信できるようにするかどうか選択する余地が残っている。
4Kの四つの特長
そこで記者は、画面が暗く見える原因と対策を取材で明らかにしたいと決意した。が、テレビ映像に関する技術的な知識はない。もともと理系は苦手だ。放送局やメーカーに本格的に取材する前に、まず下勉強として4K放送を普及・推進する一般社団法人「放送サービス高度化推進協会」(A―PAB)のサイトをのぞいてみた。
「4K・8Kの魅力」(8Kはさらに高精細な衛星放送)と題したページでは、4Kの四つの特長が紹介されていた。
①画素数がフルハイビジョンの約207万画素から、4Kでは約829万画素と4倍になることできめ細かな表現が可能に
②より色域が広がったことで、表現できる色数が増えた
③映像が本来持っている明るさや色、コントラストを表現できるHDR技術
④臨場感を味わえる5.1チャンネルサラウンドで、全方向から音を再現
なるほど。ざっくりいえば①きめ細かさ②色③明るさ・コントラスト④音、の4分野でそれぞれクオリティーが上がるということか。今回指摘された「明暗」については③の要素が関わってくるのだろうか。それにしてもHDRって何?
つぎに専門家の話を聞くことに。訪ねたのは川瀬正樹さん。映像の専門家で、デジタルソリューションビジネスを展開するシリコンスタジオ(東京)で研究開発室長兼ミドルウェア技術部フェローを務める。
教えて! 川瀬さん
――4Kの特長の一つとされる「HDR」とはどんな技術なのですか。
映像信号の技術のことです。2K放送(地デジ)の映像信号にはSDR(スタンダード・ダイナミック・レンジ)、4KにはHDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)という技術が使われています。ダイナミック・レンジは「明暗の幅」という意味です。4KのHDRは「ハイ」ですから、「スタンダード」よりも表現できる明暗の幅が大きいということです。
――そもそもSDRとは?…
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