初の女性就任で注目の欧州委員長 そもそもどんな仕事?

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聞き手・佐藤達弥
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 欧州連合(EU)の次期「委員長」にドイツ国防相のウルズラ・フォンデアライエン氏(60)を充てる人事案が承認されました。11月に就任し、EUの行政トップを初の女性として担うことになります。でも、EUには「大統領」と呼ばれる人もいたはず。委員長とどっちが偉いのでしょうか。EUの法律と政治に詳しい庄司克宏・慶応義塾大学教授に聞きました。

 ――欧州委員長ってどんな仕事ですか。

 全加盟国に適用される法案や予算を欧州議会に提案する権限を持っています。議会で成立した法律や予算の執行権も握っていて、約4万人とされるEUの官僚機構のトップに立つのが委員長です。任期は5年です。

 ――大統領は。

 EUの基本方針を決めるEU首脳会議の常任議長のことですね。EUの憲法に当たるEU基本条約での英語表記は「President of the European Council」で、「President of Europe」ではありません。大統領というのは、テレビや新聞で使われている略称で、正確とは言えません。ただ、権限が限られている儀礼的な存在の大統領もドイツなどにはいるので、この呼び名が使われているのかもしれません。

 常任議長はドイツのメルケル首相フランスのマクロン大統領ら首脳の間に立って議論を調整する役割です。実権はなく、首脳たちに指示して何かをさせるような権限は持っていません。今のトゥスク常任議長はEU離脱問題をめぐって英国とほかの加盟国が対立した際、その間を取り持ったり、メイ英首相の相談に乗ったりしていました。任期は2年半で、1回だけ再任することができるとされています。

 委員長は首脳会議が決めた方向性に、法案や予算案で力を与える。EUを引っ張っていくエンジンのような存在ですね。これに対し、常任議長は言うなれば村の長老のような存在です。村長のような権限はありませんが、大所高所に立って争いごとを仲裁する立場です。

 ――EUの最高権力者は委員長ということですか。

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 そうともいいきれません。E…

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