わたしは障害者、それが何? 専門芸能プロの挑戦

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仙波理
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 所属するタレントはみな、障がい者か難病の患者。そんな芸能プロダクションがある。歌や踊りでお客さんを楽しませる人もいれば、企業と協力しながら、新しい技術を生み出す取り組みも進む。タレントたちの挑戦の軌跡を追った。

CM起用「企業イメージと重なった」

 東京・渋谷のオフィスビル。4月、ファスナーの世界的ブランド、YKK(千代田区)と、アパレル会社「シタテル」(熊本市)が共同で開催したユニバーサルデザイン(UD)のセミナーに、梅津絵里さん(41)の姿があった。

 梅津さんは難病が原因で車いす生活をしている。障がい・難病のタレント専門の芸能プロダクション「Co―Co Life(ココライフ)」のタレント部に所属する。来年の東京五輪・パラリンピックをきっかけに、多様性への理解を浸透させたいと活動の場を広げている。

 セミナーで、UDに知見のある福岡市のデザイナー・鈴木綾さん(43)考案の服が紹介された。アパレルやファッション関係者、デザイナーら約50人を前に梅津さんは、車いす使用者だからこそ分かる実際の使用感について感想を述べた。

 黒を基調に、金色のレースをアクセントにしたドレス。裾のファスナーを外すと丈が短くなり、ワンピースのようなカジュアルな装いに。着脱しやすい伸縮する生地で、車いすで長時間使えるようにお尻の部分に柔らかい素材が取り入れられている。YKK商品戦略室リーダーの大喜多一範さん(52)は「障がい者が使いやすい製品は万人が使いやすいもの。企業側にとっても新しい需要の発見になる」と話した。

 ファスナーは本来、外れてはならないものだ。ただ、エスカレーターの巻き込み事故などの時は、外れやすいことで被害が軽減されるケースもある。力の弱いお年寄りや幼い子どもでもとっさに対処できるからだ。また、ファスナーのつまみの部分(スライダー)が左右対称ではなく、どちらかを大きくすることで、片方の手が不自由でも開閉しやすい商品が生まれた。企業側が「ココライフとの共同作業にはヒントがある」と考える理由だ。

     ◇

 昨年11月、東京メトロ東西線の日本橋駅。ホームから改札に向かう階段通路の壁がタレント部の上田菜々さん(21)=大阪在住=の写真でいっぱいになった。米国系製薬会社バイオジェンが、創業40周年を記念し、上田さんを主人公にポスターと動画CMを製作した。

 上田さんは電動車いすのネイリスト。進行性の脊髄(せきずい)性筋萎縮症の治療を受けている。神経疾患や自己免疫疾患などの治療法や薬を研究開発している同社の三井貴子広報部長(56)は「前向きな上田さんの姿が企業イメージと重なりました。彼女の姿を見ていただくことで、我が社の姿勢も伝わります」。

 高校時代から美容業界に関心があったが、美容師の仕事は立ち仕事が多く、車いす使用者には難しいとされる。でも、あきらめなかった。大阪を拠点に、美容業界有志で結成された一般財団法人「パラリンビューティ」に所属し、地元のカフェでネイルサロンを開催するほか、特別支援学校での講師やイベントで各地を飛び回る。「障がいがあっても、『それが何?』って考えるようにしています。『障がい者やから、できひんやろ』みたいに思われるのは嫌ですが、逆に行動する力になりますね」

 動画(https://www.biogen.co.jp/ja_JP/about-japan.html別ウインドウで開きます)は全編ドキュメンタリー調だ。その中で上田さんは河内弁で、こう結んでいる。

 「おう、やったろうやん!」

■オーディションに全国から応…

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