陸上イージスに民意は 反対一貫の野党、明言せぬ自民

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 参院選秋田選挙区(改選数1)で、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」配備が争点になっている。秋田市の新屋(あらや)演習場への配備で、防衛省のずさんな調査が発覚。謝罪と再調査の約束で防戦に回る与党現職に対し、野党新顔は「配備反対」を掲げ、激しく競り合っている。選挙結果は配備の行方にも影響しそうだ。

 安倍晋三首相は13日、秋田市に入り、JR秋田駅前の広場で演説した。聴衆の中に「イージス反対!」と紙を掲げる男性もいる中、「緊張感を欠いた不適切な対応があった。極めて遺憾であり、言語道断だ」と防衛省の対応を批判。「まず秋田県のみなさまに心からおわびを申し上げたい」と数秒間、頭を下げた。

 一方で首相はイージス配備が「どうしても必要だ」と主張。「第三者や専門家を入れて、徹底的に調査をしていく」と述べ、配備計画への理解を求めた。

 防衛省が5月、秋田県や秋田市に示した調査報告書は、ずさんだった。レーダー探知に影響があるかを検討する山の高さを実際より高く誤り、「津波の影響がない」としながら実際には対策が必要と認める事態に。住民説明会で職員の居眠りも発覚した。

 「危機感で選挙戦初日から心が折れそうになっていた」。自民現職の中泉松司氏(40)は12日、大潟村で約200人を集めた集会で弱音を吐いた。秋田は自民が過去3連勝し、3年前も東北6県で唯一、自民が勝った選挙区。ところが、配備問題が争点に浮上し、与党には危機感が強い。

 4日の公示日に岸田文雄政調会長小泉進次郎衆院議員、12日に甘利明選挙対策委員長、13日に首相、14日には菅義偉官房長官と連日政権幹部を投入した。

 中泉氏本人は出陣式で「防衛省による不正確な調査と不誠実な対応は言語道断だ」と県民の怒りに寄り添う姿勢を示した。しかし、配備を前提とする政権の姿勢にあらがうことはせず、その後は「良いか悪いかを言う前の段階」との発言にとどめている。配備予定地の秋田市以外で行う演説ではほとんど触れない。

 中泉後援会事務所の総括責任者を務める鎌田修悦元秋田市議は「イージス問題だけで選挙をするなら負けだ」と厳しさを認める。公明党県本部幹事長の松田豊臣県議も「防衛省の態度への怒り、なぜ秋田が配備地なのか納得できないとの声が支持者にある」と言う。

 野党統一候補となった無所属新顔の寺田静氏(44)は3月の出馬表明後、一貫して配備に反対してきた。「住宅地、学校などの目の前にミサイル基地の新設を許すことはできない」。14日午後には、前日に首相の演説があった同じJR秋田駅前の広場で、「配備に不安を覚える地域の声を背負っている」と訴えた。

 公示前日の3日には、新屋演習場から1・5キロの集会所に住民約100人が集まった。寺田氏が「私が負けたら、『秋田のみなさんは理解してくれた』と配備計画がどんどん進む。私はどうしても止めたい」と述べると拍手がわいた。

 寺田氏は配備反対の受け皿をめざしつつ、「個人」を前面に出して票の上積みを図る。時間を割くのは、自身の中学時代の不登校、弟の介護など身の上話だ。現職と比べ出遅れたが、夫は寺田学衆院議員、義父は元知事の典城氏で「寺田」の知名度は高い。

 立憲民主、国民民主、共産、社民の野党4党と連合秋田が寺田氏を支援しているが、陣営は国会議員の応援は受けず、「政党色」を消した戦いに徹する。出陣式で政党関係者で唯一演説した選対本部長の石田寛・社民県連合代表は取材に対し、「秋田市内は太平洋戦争で大規模空襲の被害に遭った記憶が強い。イージス・アショアが配備されたら、狙われるとの意識がある」と指摘。「これだけ争点化したら、事実上の住民投票だ」と語る。

■近隣住民「真っ先に敵の標的…

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