38歳の母、子は9人 出生率トップの沖縄、その影に

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真鍋弘樹
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人の減る国

 十数人の幼児がタオルケットを蹴飛ばして眠っている。外ではスコールのような雨が降っていた。

 観光客が集う那覇市国際通りのすぐ裏手、徒歩1分の場所に「玉の子保育園」はある。理事長の高良桂子さん(80)は、沖縄復帰の1972年に保育園を始め、近隣の商店や飲食店などで働く女性の子どもたちを預かってきた。

 「やはり、なんくるないさーの思いが島全体にあるのでは。子どもができても何とかなるさ、と」

 沖縄県合計特殊出生率は昨年のデータで1・89と全国一高く、政府の掲げる「希望出生率1・8」を達成している。その理由を問うと、沖縄気質を表す方言を高良さんは口にした。

 「それと同時に、一つ屋根の下で大家族が子育てを助け合う、というのも以前はあったのですが」

 沖縄でも核家族化は進み、母親にばかり負担がかかる現実を、この園は支えてきた。90年代に深夜までの夜間保育を始め、翌朝まで預かった時もある。「お母さんたちは大変なのに、何も文句を言わずに頑張っているんです」

 母親たちが多くを背負っている。宜野湾市助産院を営む小森香織さん(59)もそう考えている。四半世紀前に関西から沖縄へ移住し、助産師をしながら沖縄の母親たちに伝えてきたのは「もっと自分のことを大切に」という言葉だったという。育児ストレスで母乳のトラブルを抱え、彼女の元に駆け込む女性が増えている。

 「母親が一人ですべてを担ってつぶれていく。女性の苦しさは県外と同じで、沖縄で子どもを産むのが楽なわけではないんです」

 出生率の高さに相反し、沖縄県の離婚率、貧困率は全国トップレベルだ。さらに基地被害にも苦しむ沖縄で、「人の再生産」である出生率がなぜ高いのか。その裏面を、あるNPOの活動に見た。

 「産んでくれてありがとう…

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