城真弓
拡大する移動する際も腹部にしがみつき離さない=2019年3月2日午後4時25分、北九州市小倉北区、到津の森公園提供
キララはいつも、キンジを抱っこしていた。食事の時も、眠る時も。キンジはその小さな手足で、キララのおなかをしっかりとつかまえていた。チンパンジーの親子は北九州市にある動物園で、いつまでも幸せに暮らすはずだった。
拡大するキンジを抱っこするキララ=2019年2月26日午後2時53分、北九州市小倉北区、到津の森公園提供
キララがキンジを産んだのは、昨年暮れのこと。初めての出産だった14年前は赤ちゃんを放り出してしまったと、飼育員の女性(37)は先輩から聞かされていた。人の手によって育てられたからだろうか。今度は大丈夫だろうか。
そんな心配をよそに、キララはすぐに赤ちゃんを胸に抱いた。3日目には、チュパチュパとおっぱいを吸う音がおりの外まで響いた。
拡大するキンジを抱っこするキララ(左)と、キララに寄り添うクララ(右)=2019年3月9日午後2時35分、北九州市小倉北区、到津の森公園提供
生活がすっかり落ち着いた2月。母子のおりで、キララの双子の姉妹のクララも一緒に暮らし始めた。母子が群れでの生活に移るための準備だった。姉妹はもともと仲が良く、クララは母子に寄りそい、まもなく一緒に寝転がる姿もみられた。
異変が起きたのは、気温が上がって夏日になった5月下旬のことだった。
朝、飼育員がおりをのぞくと、…