シンギュラリティーにっぽん
マイカーなどに人を乗せるライドシェア(相乗り)が、高齢化が進む地方の足を確保しようと広がってきた。人工知能(AI)などを使って世界では巨大産業になったが、規制が取り巻く日本では壁にぶち当たっている。(牛尾梓、編集委員・堀篭俊材)
エイサー踊って進出を歓迎
スマートフォンでアプリを立ち上げ、目的地を設定すると、ほどなく1台のワゴン車が現れた。
沖縄本島から20キロ余りしか離れていない鹿児島県最南端の与論島はマリンスポーツが盛んな島だ。本園秀幸さん(45)は地元でマリンショップとペンションを経営するかたわら、ライドシェアサービス「CREW(クルー)」のドライバーを始めた。
クルーは、利用したい人が乗車場所と目的地をアプリで設定すると最寄りの登録ドライバーに依頼が届き、マイカーで送ってもらえる。与論では6月に始まり、現在は9人の島民がドライバーとして登録している。
年間約7万人の観光客が訪れる与論島の人口は約5千人。公共交通は毎時1本の路線バスとタクシー8台があるだけだ。タクシー運転手は農業などとの兼業が多く、観光シーズンは配車が間に合わないこともある。観光客が多い10月まで、クルーがサービスを提供することになった。
クルーを運営するAzit(アジット)(東京)の吉兼周優(ひろまさ)・最高経営責任者(CEO、26)は「既存の交通機関では賄いきれない部分を補完し、地域の交通格差を埋めたい」と話す。
本園さんの車を利用した記者が、初めて島を訪れたと伝えると、「見せたい隠れスポットがたくさんあってね」と少しだけ遠回りして、エメラルドグリーンの海が一望できる海岸に立ち寄ってくれた。「日の出ならここ、夕日ならここと見せたい景色がたくさんある」。島で生まれ育った本園さんだから知る島の魅力を聞いているうちに、車は目的地の与論空港に着いた。
与論空港まで6キロを走った…
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