記者解説 編集委員・佐藤武嗣
トランプ米大統領は6月29日、G20大阪サミットでの記者会見で、日米安保条約について「不公平な条約だ」と言い切った。安倍晋三首相に「(現状を)変える必要があると言った」と是正を求め、首相もそれを理解していると強調した。
2016年の米大統領選を取材したとき、トランプ氏は集会で「日本が攻撃されれば、我々は米国の軍事力を全面的に行使しなければならない。だが、我々が攻撃を受けても日本は何もする必要がない」と主張していた。「彼らは家でくつろぎ、ソニーのテレビを見ている。こんな合意ってあるだろうか」とも訴え、支持者から喝采を浴びていた。
「世界の警察官」を自任してイラク戦争などを主導してきた米国だが、戦争の長期化と財政難で米国内には厭戦(えんせん)ムードが依然漂う。トランプ氏はこうした世論をすくい取り、米国は他国防衛に兵士の命と巨費を投じているのに、同盟国は対価を払わず、それを歴代大統領が容認してきたと批判。「条約は不公平」発言も、売り文句の「米国第一主義」の一環といえる。
米国には日本を防衛する義務があるのに、日本には米国を守る義務がない――。トランプ氏は、米国だけが一方的に義務を負う「片務」条約だと言いたいようだ。日本ではこの発言は日米貿易交渉で優位に立つための「脅し」だとの見方もあるが、心底から条約が不公平だと思い込んでいるのだろう。
■日米、それぞれの「義務」…
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