「アカウントを完全に消して」香港デモ取材、彼は告げた

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上海=宮嶋加菜子
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 「チッウィ」、「ハートゥイ」。

 刑事事件の容疑者を中国本土へ引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例」改正案を巡り、混乱が続く香港。6月中旬、現地に取材に入り、一番最初に覚えた広東語が、この二つだ。

 「チッウィ」は「撤回」、「ハートゥイ」は辞任を意味する「下台」。条例改正案の「撤回」と、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の「辞任」。香港での取材中、人が集まる場所では必ずこの二つの言葉がわき起こって波のように広がり、大合唱になった。地鳴りのような響きに、地の底からわき上がってくるような香港市民の危機感と、中国本土と香港との間の断絶の大きさを感じた。

香港初日、催涙弾の痛み

 自分は中国・上海を拠点に中国本土での取材をしているが、改正案に反対する市民たちの声が日増しに大きくなっていた6月12日、取材の応援で香港に入った。その日も、改正案に反対する学生や市民が立法会(議会)周辺の道路を占拠し、緊張感が高まっていた。午後3時過ぎ、地元警察は抗議する若者たちに催涙弾やゴム弾を発射。午後6時ごろ、現場最寄りの香港島の金鐘(アドミラルティ)駅に降り立つと、駅構内はゴーグルにヘルメット、マスクをつけた若者たちでごった返していた。構内のあちこちにペットボトルの水や目薬を配布するグループ、ヘルメットを回収するグループがいた。その準備の良さに、一連の抗議は衝動的な行為ではないのだと感じた。

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 駅の外に出ると、立法会近く…

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